住宅の断熱について、どこが弱点になるかご存じでしょうか。
壁や屋根、床の断熱も非常に重要ですが、家の大部分の断熱性能は窓で決まると言われるほど窓の断熱性能は重要になってきます。
分厚い断熱材に守られている壁や屋根、床と比べ十分な断熱材を入れることができない窓は、住宅の断熱性能のアキレス腱であることは間違いありません。
ですので、その窓を如何に攻略するかが断熱性の高い快適な住宅への近道となります。
ここでは、窓の重要性についてまとめていこうと思います。
日本の住宅に一般的に使用されている窓は、アルミサッシと単層ガラスです。
昨今では複層ガラスとアルミ樹脂複合サッシが一般的になりつつありますが、まだまだアルミサッシと単層ガラスを使っている住宅は多いです。
その一般的に使用されているサッシは一般的な外壁に比べて10分の1程度断熱性能しかないのはご存じでしょうか。
つまり、どんなに家を断熱材で囲っても、冷気や熱気が窓を通して外から伝わってくるのです。
冬の場合は家全体のおおよそ50%が窓から外に熱が逃げ、夏の場合はおおよそ75%が窓から熱が伝わってきます。
実際に窓の近くで冬は冷気を感じたことはありませんか?
夏には熱気を感じたことありませんか?
アルミサッシと単層ガラスの組み合わせはどこでも一般的に使われていますので、見つけたら是非とも実感してみてください。
つまり、年中快適な家を目指すのであれば窓をしっかりと断熱することが大切なのです。
それでは、どのように窓を断熱すればいいのでしょうか?
その答えは各メーカーから断熱性能の高い窓が出ていますので、適切な窓を選ぶことによって窓をしっかりと断熱することができるのです。
窓ガラスには、ガラス1枚の単層ガラス、ガラス2枚のペアガラス、ガラス3枚のトリプルガラスがあるのをご存じでしょうか。
こちらの写真の赤丸で囲って箇所を見て頂くと分かりやすいと思うのですが、ガラスが3枚ありますね。
これがトリプルガラスです。2枚なのがペアガラス、1枚が単層ガラスになります。
そして各ガラスの間に隙間があり、この間に何を入れるかによって断熱性能が変わってきます。
一般的に言われているのが「空気層<アルゴンガス<クリプトンガス」になります。
イメージとしては、下記の図のようになります。
空気層とは文字通り空気の層で、アルゴンガスは空気に含まれる元素として窒素(約78%)、酸素(約21%)に次いで3番目(約1%)に多い希ガスとなります。
特徴としては空気より重く、熱を通さない物質で、クリプトンガスはさらに熱伝導率が低い物質となります。
実際の熱伝導率については、下記の通りです。
空気層 | アルゴンガス | クリプトンガス |
---|---|---|
0.024[W/mK] | 0.016[W/mK] | 0.009[W/mK] |
熱伝導率が低ければ低いほど熱を通さなく高断熱と言う意味合いになります。
*真空は熱を通さないので一般的に最上位と言われていますが、サッシ全体の構造によってはクリプトンガス仕様のサッシの方が真空よりも上を行くので、ここではクリプトンガスを最上位と定義しテーブルに上げていません。
トリプルガラスのクリプトンガス仕様については現時点で最高峰の仕様であることは間違いないですか、もちろんデメリットもあります。
コストがペアガラスに比べ高く、窓が重くなってしまうという点です。
そこを加味しつつ、ご自身の住宅にはどういった窓が必要か考察する必要があります。
また、ガラスだけが窓ではありません。
窓枠も非常に大切な要素であるので、事項では窓枠について見ていきます。
窓枠については、アルミサッシ、オール樹脂サッシ、アルミ樹脂複合サッシが主に上げられます。
アルミサッシ
窓枠が室外室内ともアルミでできているサッシ。
非常に安価で耐久性も強いが断熱性能が極端に低く健康被害も発生する可能性があるサッシ。
熱貫流率(ペアガラスの場合):4.65W/m2・K
アルミ樹脂複合サッシ
耐久性を求められる室外側がアルミ、断熱性を求められる室内側が樹脂で出来ているハイブリットサッシ。
多くの住宅メーカーが採用し、新築住宅では一般的なサッシの為比較的安価に手に入る。
熱貫流率(ペアガラスの場合):2.33W/m2・K
オール樹脂サッシ
断熱性を追求したサッシ。
海外では一般的に採用されているサッシで断熱性も非常に高いが、アルミと比べ耐久性に不安があり価格も高い。
しかし国内YKK AP社では耐久試験としておおよそ30年前から実際に実物を屋外に設置して観察を行い、特に目立つ表面変化はみられていないとの事。
熱貫流率(ペアガラスの場合):1.3W/m2・K
木製サッシもありますが、日本ではあまり普及していなく採用しているメーカーも少ないため今回は割愛しています。
気になる人はスウェーディッシュな家を調べてみてください。
それは本末転倒ではないでしょうか。
ここまで窓の事について学んできましたが、一番大切な事は設計のタイミングで太陽を味方につけるという事です。太陽にはどう足掻いても勝てません。
真夏に太陽光がどんどん入ってくる設計の家だと、どんなに良い窓を付けたとしても熱は家の中に入ってきます。
その為軒や日よけを上手く使用し、太陽光を如何に遮って家の中に入れない設計をしているという事が非常に大切です。
また西側に大型の窓を設置した場合、そこから太陽光が入ってきて夏は非常に熱くなってくるので如何に間取りの段階から太陽を敵に回さない設計をするかが大切になってきます。
そして、西日と言うのは窓に対しても非常に強いダメージを与えます。
熱い日差しが長時間にわたって窓に当たるという事は、如何にトリプルガラスと言えど確実に窓の寿命を削ります。
特にローコストメーカーの住宅営業マンは、窓ガラスにガスを入れたとしても抜けてしまいますよと言う人がいます。
確かに形あるものはいつか壊れますのでこの表現は間違いなく正しいです。
ですが、窓を長持ちさせる設計をすることによって窓ガラスのダメージを限りなく少なくすることは可能です。
事実、私の建てた家には西側の窓はありません。
その為窓がダメになる以前にダメになるものがないので快適な生活が約束されていると信じています。
そして、冬は如何に太陽光を家の中に入れ家の中を温めるという事が非常に大切になってきます。
電気代は夏場よりも冬場の方が高くなる傾向があります。
少しでも暖房費を少なくするためにも、太陽の熱を家の中に取り入れ、それを逃がさないかという事が重要です。
太陽は敵に回れば非常に厄介な空いてですが、味方にすることができれば非常に心強い友になります。
人類の叡智を集めた最高の窓を使用したとしても太陽には太刀打ち出ません。
ですので太陽とケンカしないような設計を心がけ、その上で窓の性能を考えていくことが大切です。
単層ガラスのアルミサッシは殺人級に論外ですが、それ以外についてはコストやスペックを見てどれが自分に適しているか、ご自分の住んでいる地域の気候の事を考えて選ぶことが重要です。
私は高気密高断熱を求めたためトリプルガラスの樹脂サッシを選びましたが、アルミ樹脂複合サッシのペアガラスも決して最悪に性能が悪いというわけではありません。
ハニカムスクリーン等を使用すればペアガラスでも快適性を上げることは可能です。
ですが、今後はより省エネを求められる時代に突入する事が予想されますので、今のうちにトリプルガラスの樹脂サッシを採用することを私は強くお勧めします。
アルミと比べて耐久性が低いという事を懸念される人もいるかと思いますが、アルミサッシやアルミ樹脂複合サッシは結露します。
トリプルの樹脂サッシは全く結露しないというわけではないですが、アルミやアルミ樹脂複合サッシより結露するリスクは非常に低いことは間違いありません。
結露は家の寿命を削ります。窓を守ったとしても家自体を救う事が出来なければ本末転倒です。
そして、窓の性能だけを追いかけて太陽を敵に回す設計をする事は絶対に避けてください。
太陽を敵に回さなければ樹脂サッシ破損のリスクも下がりますし、内部のガスの寿命も伸ばすことができます。
窓は家の顔でもありますが家の弱点でもあります。
弱点を如何に補いながら最高の家を作るか、ここに家づくりの難しさと楽しさが詰まっていると思います。